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40代 男性のご相談

うっ滞性皮膚炎ってどんな病気?

医師の回答

うっ滞性皮膚炎(うったいせいひふえん)は、足の静脈の血流が滞ることで皮膚に炎症が起きる慢性の皮膚疾患です。 足首やふくらはぎの下の方にかゆみや赤みが出たり、皮膚がカサカサ・ジュクジュクしたり、色が茶色や黒っぽく変色してくるのが特徴です。放置すると皮膚が硬くなったり、最終的には皮膚潰瘍(皮膚が破れて治りにくい状態)に進行することもあるため、早めの対処が重要です。

この疾患は、足の静脈内の血液がうまく心臓に戻れず、足にたまってしまう「うっ滞」が原因です。血液やリンパの流れが滞ることで周囲の組織に負担がかかり、皮膚に炎症が生じます。特に夕方に足がむくむ人や、靴下の跡がくっきり残るような人は注意が必要です。

症状は、足の赤みやかゆみ、皮むけ、湿疹、ジュクジュクとした浸出、茶色い色素沈着、皮膚の硬化感、足のむくみ・重だるさなど。これらは左右両方の足に同時に起こることもあります。進行例では、皮膚が厚くゴワゴワし、潰瘍ができてしまうこともあります。

うっ滞性皮膚炎になりやすいのは、高齢の方、立ちっぱなし・座りっぱなしの仕事をしている人(販売・事務職など)、過去に下肢静脈瘤のあった方、足の手術やけがをした後で血流が悪くなっている方などです。とくに、夕方に足のむくみが強くなる人は、慢性的な静脈うっ滞を抱えている可能性があります。

診断の際は、似た症状を示す他の皮膚病との鑑別も重要です。たとえば、かぶれやアレルギーによる接触皮膚炎、冬に多い乾燥性湿疹、水虫(白癬)、自己免疫疾患による皮疹、下肢静脈瘤そのものなどと見分ける必要があります。特徴的なのは、「むくみ」「左右両足に出る」「茶色~紫色の色素沈着」「潰瘍ができやすい」などの所見です。

治療の基本は、皮膚の炎症を抑えると同時に、血流の改善を図ることです。具体的には、ステロイド外用薬などで皮膚の炎症を抑えつつ、弾性ストッキングの着用や足を高くして休むことで、足にたまった血液を効率よく戻すようにします。また、血管の異常(下肢静脈瘤など)がある場合は、必要に応じて血管外科での治療が行われることもあります。

うっ滞性皮膚炎は、市販薬ではなかなか改善しないことが多く、進行すると治療に時間がかかります。さらに、背景に心臓や腎臓の病気が潜んでいることもあるため、「ただの湿疹かな?」と自己判断せず、なるべく早めに皮膚科専門医にご相談ください。

 

     

 

 

【主なお薬】
① 【外用ステロイド剤】
▶ 炎症(赤み・かゆみ・湿疹)を抑える第一選択薬

・Very Strong モメタゾンフランカルボン酸 フルメタ など
・Strong ベタメタゾン吉草酸エステル リンデロン-VG など。感染合併が疑われるときは抗菌薬入りを使用
・Medium ヒドロコルチゾン酪酸エステル ロコイドなど
・Weak プレドニゾロン プレドニン軟膏など
※炎症が落ち着いてきたら、徐々に減量・中止していきます。

② 【保湿剤(スキンケア)】
▶ 慢性の乾燥やバリア機能回復に重要。継続使用が基本
・ヘパリン類似物質外用薬:ヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイドローションなど
・白色ワセリン、プロペトなど
・尿素製剤(角化が強い場合のみ。ただしびらん部位には避ける)
・ケラチナミンコーワクリームなど

③ 【抗菌薬外用剤】
▶ 二次感染(とびひ様、黄色い膿やびらん)があるときに使用
・アクロマイシン軟膏(テトラサイクリン)
・フシジンレオ軟膏(フシジン酸ナトリウム)
・リンデロンVG軟膏(ステロイド+抗菌薬)

④ 【内服薬】
▶ 抗ヒスタミン薬(かゆみ止め)
・アレグラ(フェキソフェナジン)
・アレロック(オロパタジン)
・ザイザル(レボセチリジン)など

▶ 抗生物質(感染が広がっている場合)
・セファレキシン(ケフレックス)
・アモキシシリンなど

▶ 利尿剤(浮腫のコントロールが必要な場合)
・フロセミドなど ※他疾患との関連があれば

⑤ 【圧迫療法の補助:外用とは別に重要】
▶ お薬ではないですが、治療の中心は「弾性ストッキング」などによる圧迫療法です。
・医療用弾性ストッキング(クラスI~III)
・包帯法(間欠的圧迫)
・医療機関でのフットケア指導

予防や日常のケアは、
長時間同じ姿勢で立ち続けたり座りっぱなしにしないように心がけること、
寝る前などに足を高くして休むこと、
毎日の保湿で皮膚を守ること、
ウォーキングや足首を動かす体操などで血流を促すことが効果的です。また、弾性ストッキングの着用も有効な予防策のひとつです。

日本静脈学会|静脈うっ滞性皮膚炎・潰瘍について
https://www.jsvs.org/public/varicose_veins.html
→ 静脈うっ滞が原因の皮膚変化と治療方法(ストッキング、弾性圧迫)について解説。

MSDマニュアル家庭版|うっ滞性皮膚炎(Stasis Dermatitis)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/14-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E/%E3%81%86%E3%81%A3%E6%BB%9E%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E
→ 症状・原因・合併症・治療が医学的視点から整理されています。

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/17-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E3%81%8B%E3%82%86%E3%81%BF%E3%81%A8%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E/%E3%81%86%E3%81%A3%E6%BB%9E%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E

https://www.msdmanuals.com/professional/dermatologic-disorders/dermatitis/stasis-dermatitis

Stasis Dermatitis

https://www.msdmanuals.com/home/skin-disorders/itching-and-dermatitis/stasis-dermatitis