
40代 男性のご相談
眼皮膚白皮症ってどんな病気?

医師の回答
眼皮膚白皮症は、生まれつきメラニンという色素が少ない体質により、皮ふ・髪・目がとても色が薄くなる病気です。
〜色が白い、光に弱い…生まれつきのメラニン不足による病気です〜
眼皮膚白皮症とは、皮ふ・髪・目の色が生まれつき薄くなる遺伝性の疾患です。
体の中でメラニン色素がうまく作れないため、紫外線に弱く、目や皮ふにさまざまな症状が現れます。
眼皮膚白皮症(がんひふはくひしょう、Oculocutaneous Albinism:OCA)とは、皮ふ・髪・目の色が生まれつき薄くなる遺伝性疾患の総称です。体の中でメラニン色素が十分に作られないため、外見の特徴だけでなく、紫外線に対する感受性や視力に関わる症状が現れます。感染症ではなく、遺伝による先天性の体質であり、人にうつることはありません。生まれつき肌や髪が白く、目の色も淡く、光をまぶしく感じやすい(羞明〔しゅうめい〕)ことが大きな特徴です。
眼皮膚白皮症には、メラニンが全く作れないタイプから一部は生成されるタイプまで複数の病型が知られています。代表的にはOCA1からOCA7までの分類があり、髪・皮ふ・目に及ぶ症状の程度や経過に幅があります。皮ふが白く紫外線に弱い型、目の発達や視力に強い影響が出る型、髪の色素が比較的残る型などが報告されています。
主な原因
メラニン生成に関わる遺伝子の変化
メラニン産生酵素の働きが不十分
紫外線防御が弱くなることによる皮膚ダメージ
網膜や視神経の発達異常につながる場合がある
皮ふは顔・手・腕など露出部で特に紫外線の影響を受けやすく、日焼けや皮膚がんのリスクが高まります。目では羞明、視力低下、眼振(がんしん:眼球の揺れ)や斜視がみられやすく、学童期以降の日常生活に影響を及ぼします。髪・眉・まつ毛は白色または淡黄色を呈し、全体的に色素が少ない印象となります。遺伝性疾患であり、両親からの遺伝により発症します。
経過としては、幼少期から皮ふと目の症状が明らかであり、紫外線に当たることで日焼けや炎症を繰り返すと将来的に皮膚腫瘍のリスクが増加します。視力は成長に伴って低下が目立つことがあり、羞明や眼振が学業や生活に影響します。悪化因子としては強い日差し、屋外活動時の汗や照り返し、長時間の紫外線曝露が挙げられます。早期に皮膚科や眼科で定期的な観察や生活指導を受けることで、合併症を減らし、日常生活の質を高めることができます。

眼皮膚白皮症(OCA)そのものを根本的に治す薬は現時点でありません。そのため、治療は合併症の予防と生活の質を高めるための対応が中心になります。
🔬 病院で何を調べるの?
視診・問診:皮ふや髪・眼の色、日焼けのしやすさ、まぶしさの程度を確認します。出生時からの症状や家族歴を丁寧に聴取し、遺伝性の可能性を評価します。
眼科検査(視力・眼底・眼振の観察):羞明や視力低下の程度、網膜や視神経の状態を調べます。小児期から定期的に行うことで発達への影響を把握できます。
遺伝子検査:メラニン生成に関わる遺伝子の異常を確認します。確定診断に有用であり、家族に対する説明や将来の治療研究にもつながります。
皮ふのダーモスコピー検査:皮ふの色素沈着の状態や小さな病変を観察します。紫外線の影響による皮膚がんの早期発見に役立ちます。
皮膚がんスクリーニング:露光部の色素斑や腫瘤を定期的にチェックします。紫外線に弱い体質のため、半年〜1年ごとの観察が勧められます。
- 血液検査(必要時):特異的な異常は少ないですが、全身の健康状態や免疫・炎症マーカーを把握する目的で行うことがあります。
🔬 間違えやすい他の病気(鑑別)
疾患名 特徴 見分けポイント尋常性白斑(白なまず)
⇒部分的に皮膚の色が抜ける 髪や目の色には影響しない/あとから出てくる/自己免疫が関与眼白皮症(眼型アルビニズム)
⇒目だけに色素異常があり、視力に影響 肌や髪の色は普通/視力検査で判明することが多い日光皮膚炎(光線過敏症)
⇒日光に当たって発赤や水疱が出る皮膚病 肌の色自体は普通/発疹の出方が異なるHermansky–Pudlak症候群(HPS)
⇒白皮症+出血傾向や肺・腸疾患も 日本(特に沖縄)に多い/血小板の異常や臓器合併がヒント色素性乾皮症(XP)
⇒遺伝性で日光に非常に弱く、皮膚がんのリスク大 肌色は普通のことも/幼少期からシミ・皮膚がんが出現しやすい
予防のポイント 紫外線を避けるために日焼け止めを毎日使用する 帽子・長袖・日傘で肌を物理的に守る サングラスや遮光レンズでまぶしさを軽減する 室内にUVカットフィルムやカーテンを利用する 定期的に皮膚科で皮膚チェックを受ける 定期的に眼科で視力や眼底の検査を行う 学校や職場で直射日光を避ける環境を整える 本人が「見えにくい」「まぶしい」と伝えやすい環境をつくる
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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