
40代 女性のご相談
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)ってなに?

医師の回答
ADM(エーディーエム)は、おでこ、頬、小鼻の周りにできる直径1~3mmの点状のしみです。 ADMの場合、皮膚の深層部分でメラニンが作られるため灰褐色のしみになります。顔の左右対称的に多数のしみができます。

〜ほおや額にできる“左右対称の青〜灰色のシミ” それはADMかもしれません〜
ADMは「後天性真皮メラノサイトーシス(こうてんせい・しんぴ・メラノサイトーシス)」という、
肌の奥(真皮)にメラニン色素が沈着してできるアザ・シミの一種です。
ADMは、肌の奥にある「真皮層」という深い部分にメラニン色素が沈着することで生じます。一般的なシミ(例えば肝斑や日焼けによる色素沈着)は皮膚の表皮にメラニンが増えてできるのに対し、ADMは真皮内にメラニンを産生するメラノサイトが後天的に出現し、活性化することで発症します。そのため、シミの色味が青っぽい・灰色っぽい・グレーがかった薄い茶色になるのが特徴です。また、ファンデーションやコンシーラーでも隠れにくいという悩みもあります。
ADMの主な出現部位は、両頬(頬骨の上)、鼻筋、下まぶた〜こめかみ、額(おでこ)などです。いずれも顔の中心から左右対称に分布し、「なんとなく最近出てきた」と気づかれるケースがほとんどで、生まれたときからあるわけではありません。思春期、妊娠、ホルモンバランスの変化、紫外線、ストレスなどをきっかけに色が濃くなったり、目立つようになったりすることがあります。
発症しやすいのは、10代後半〜30代のアジア系女性で、肌がやや色白で敏感な傾向のある方、過去にそばかすや肝斑といった色素トラブルを経験したことがある方などです。そばかすや肝斑と間違われることも多く、特に自己判断で美白剤を使って悪化させてしまうケースも少なくありません。
ADMは肌の深部(真皮)に色素が沈着しているため、スキンケアや外用薬では改善が難しいのが現実です。そのため、根本的な治療にはレーザー治療が有効とされています。
特に効果があるとされているのが、Qスイッチレーザー(ルビーレーザーなど)で、メラニンに反応する特殊な光を照射して、徐々に色素を壊していく治療法です。多くの場合、3〜5回以上の施術が必要であり、治療中には一時的にかさぶたができたり、色素沈着が生じたりすることもありますが、時間とともに薄くなっていきます。なお、ADMのレーザー治療は保険適用外(自由診療)となるケースが多いため、事前に費用などを医療機関に確認することが大切です。
日常生活では、ADMを悪化させないためのセルフケアも重要です。まずは紫外線対策の徹底。日焼け止めを欠かさず使い、帽子や日傘で直接日差しを避けるようにしましょう。さらに、レチノールやビタミンC誘導体配合のスキンケアで肌のターンオーバーを整えることや、ホルモンバランスやストレスの管理も大切なポイントです。
「最近、頬に青っぽいシミが出てきた」「そばかすや肝斑かと思ったけど、なかなか消えない」と感じたら、自己判断せず、早めに皮膚科で診断を受けることが大切です。正確な診断によって、ADMかどうかを見極めた上で、最適な治療方針を立てる必要があります。
✅ ADMに使われる薬についての結論
ADMに対しては、基本的に“飲み薬・塗り薬は無効”です。
なぜなら、ADMは皮膚の深い部分(真皮)にメラノサイトが存在する色素性疾患であり、表皮レベルの治療では届かないためです。
❌ 無効なことが多い治療薬(例)
美白外用薬 ハイドロキノン、トラネキサム酸外用、ビタミンC誘導体 表皮のメラニンには効果があるが、ADMには届かない
内服薬 トラネキサム酸(トランサミン)、ビタミンC・E 肝斑には有効なこともあるが、ADMには通常効果なし
ステロイド外用薬 ロコイドなど 炎症性色素沈着ではないため効果なし
✅ 有効な治療は「レーザー治療(皮膚の深層をターゲット)」
ADMの治療に効果的なのは医療用レーザーです。
▶ 使用されるレーザー
Qスイッチルビーレーザー 真皮のメラニンを破壊し、ADMの標準治療。保険適用になる場合あり。
QスイッチNd:YAGレーザー(波長1064nm) より深部への到達が可能。色調が濃い人に有利。
ピコレーザー(ピコ秒レーザー) ダウンタイムや色素沈着が軽く、効果も高いとされる(自費診療が多い)
「これってADM?」「レーザー治療ってどのくらい費用がかかるの?」など、不安なことがあればお気軽にご相談ください。
病院で何を調べるの?
✅ 1. 視診(見た目の確認)
皮膚科医はまず、肉眼でシミの形・色・分布・左右対称性などを確認します。ADMは、特徴的に青〜灰色の点状の色素沈着が、頬骨やこめかみなどに左右対称に出現します。
この視診だけで、ある程度は肝斑・そばかす・ADMの違いを見分けることができます。
✅ 2. ダーモスコピー(拡大鏡)による観察
小型の拡大スコープ(ダーモスコープ)を使って、皮膚の表面構造や色素分布を詳しく観察します。
ADMでは、点状または網目状の色素沈着が真皮層にあることを示す所見が見られます。
✅ 3. ウッド灯検査(紫外線ライト)
特殊な紫外線ライトを使い、皮膚に当てることで、色素が皮膚の浅い層(表皮)か深い層(真皮)かを判断します。
→ ADMは真皮に色素があるため、ウッド灯では色があまり強調されず、ぼんやり見えるのが特徴です(肝斑や表皮性のシミは強く光って見える)。
✅ 4. 必要に応じて皮膚生検(まれ)
まれに診断が難しい場合、皮膚の一部を採取して顕微鏡で組織を調べる皮膚生検を行うこともあります。ただし、ほとんどのケースでは視診+ウッド灯検査+ダーモスコピーで診断がつきます。
◆ ADMと似た色素の病気・しみ(鑑別疾患)
太田母斑
⇒青あざが片側の顔に広がる/生まれつき or 思春期に出る 片側のみに出ることが多い/眼球にも色がつくことも
肝斑(かんぱん)
⇒茶色くて左右対称のもやっとしたシミ ADMより色が浅く茶色/スキンケアで改善可能なことも
雀卵斑(そばかす)
⇒小さな茶色の点が顔全体に出る 幼少期から出る/日焼けで濃くなるが、ADMは青〜灰色で濃くなりにくい
炎症後色素沈着
⇒ニキビや湿疹のあとに残る茶色い色素沈着 時間とともに自然に薄くなる/色は茶色が中心
異所性蒙古斑
⇒通常おしりにできる青あざが、背中や顔に出ることも 乳児期に発見/成長とともに消えることが多い
ADM以外の真皮性色素斑(複合型)
⇒ADMと太田母斑の中間のような症状 ダーモスコピーや病理で鑑別が必要なことも
◆ ADMの見分けポイントまとめ
・ 青〜グレーの小さな点状しみ
・ 両側の頬などに左右対称で出る
・ 明るい場所や鏡でよく見るとうっすら浮き出るような感じ
・ 茶色のシミ用の美白化粧品では効きにくい◆ ADMの治療法と注意点
・Qスイッチレーザー メラニンに反応するレーザーで色素を破壊。複数回の照射が必要です(3〜6回目安)
・経過観察 治療をしないと自然に消えることはありません
・美白剤やトーニング 表在性のしみに比べ効果が限定的(ADMは真皮性なので届きにくい)
・日焼け対策 治療中・後も**紫外線は厳禁!**日焼け止めで予防を
こんなときは皮膚科へ!
青~グレーっぽいシミが左右対称に出てきた
シミ用化粧品が効かない/むしろ濃くなった気がする
写真で見ると影のようにうつる顔のくすみが気になる
肝斑・そばかす・太田母斑とどう違うのか知りたい!
→ まずは専門医の診断が大切!
皮膚科では、ダーモスコピーやウッド灯での確認、レーザー治療プランのご提案ができます
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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