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20代 女性のご相談

温熱性紅斑(火だこ)ってどんな病気?

医師の回答

温熱性紅斑は、ストーブやこたつ、カイロなどの暖房器具の熱が、体の同じ部分に長時間あたり続けることで起こる皮膚炎です。
低温やけどとは異なり、比較的弱い温度(40~50℃)の熱によって、皮膚に赤色~褐色の網状の色素沈着が現れるのが特徴です。見た目はまるで「網目模様」や「まだら模様」のようになり、ヒリヒリ感や軽いかゆみを伴うこともあります。

冬の寒さ対策として使われるカイロやこたつ、電気毛布、ホットカーペットなどの暖房器具は、私たちの生活を快適にしてくれる一方で、皮膚トラブルを引き起こす原因にもなります。その代表的なものが「温熱性紅斑(おんねつせいこうはん)」です。これは、比較的弱い温度(およそ40〜50℃)の熱が、皮膚の同じ部分に長時間当たり続けることで生じる皮膚の炎症で、「火だこ」とも呼ばれています。温熱性紅斑では、皮膚に赤〜褐色の網目状、またはまだら模様の色素沈着が現れ、ヒリヒリ感や軽いかゆみを伴うこともあります。

この症状は、熱によって皮膚の毛細血管がじわじわと拡張し、色素沈着のような変化を起こすことが原因です。数日〜数週間にわたり熱が当たり続けると、目立つような赤みが現れ、時間の経過とともに茶色っぽい跡が残ってしまうケースもあります。カイロを貼っていたお腹や腰、こたつにあたっていたすねや太もも、ノートパソコンを膝の上で長時間使用していた場合の太もも裏、電気毛布を使っていた背中など、「じんわり熱が当たり続けた部位」に多く見られるのが特徴です。

特に、カイロやこたつ、湯たんぽなどを頻繁に使用する冬場、またはノートパソコンを太ももの上に長時間置いて作業する習慣がある人、そして皮膚が敏感な方や高齢者、子どもは温熱性紅斑を発症しやすい傾向にあります。赤みはじわじわと進行していくため気づきにくく、気づいたときには茶色い網目模様が残っていることも少なくありません。さらに、熱の影響が長引くことで、かゆみやヒリヒリ感、乾燥感が強くなったり、まれにですが熱刺激によるやけどや皮膚がんのリスクが生じる可能性もあると報告されています。

温熱性紅斑の治療には、まず熱源を取り除くことが最も重要です。カイロやこたつなどの使用を中止し、皮膚から熱を遠ざけることが第一です。皮膚の乾燥やかゆみがある場合には、保湿剤の使用が推奨され、必要に応じて軽度のステロイド外用薬を使うこともあります。赤みは数週間で自然に薄くなることもありますが、色素沈着が残ってしまった場合には、改善までに数ヶ月以上かかることもあります。なかなか消えない色素沈着が気になる場合には、美容皮膚科などでレーザー治療を検討することもあります。

このような症状を予防するためには、暖房器具を肌に直接当てない、同じ部位に長時間当て続けないように意識することが大切です。カイロや電気毛布は衣類の上から使用し、こたつやホットカーペットは低温かつ短時間の使用を心がけましょう。ノートパソコンを使う場合は膝の上に直接置かず、台などを利用することが望ましいです。また、皮膚に赤みや熱感を感じたらすぐに使用を中止し、悪化を防ぐことが重要です。

💊主な治療薬】
① 【軽症(赤み・軽度の炎症)の場合】
外用ステロイド(短期間)
ロコイド軟膏(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)
キンダベート軟膏(クロベタゾン酪酸エステル) 
⇒かゆみ・炎症がある時に短期間使用します。

② 【色素沈着が残っている場合】 美白外用薬・色素沈着の改善目的
    成分名・ 商品名                              コメント
トラネキサム酸外用薬 トランシーノ ホワイトCクリアなど           抗炎症・美白作用
ハイドロキノン ※医療機関または市販で購入可                色素沈着抑制、ただし刺激あり注意
アスコルビン酸(ビタミンC)外用 メラノCC、チョコラBBリッチセラミド   補助的な使用に

③ 【保湿剤(皮膚バリア回復)】

ヘパリン類似物質 ヒルドイドソフト、ビーソフテンなど
ワセリン系 プロペト、白色ワセリン
尿素製剤(角化がある場合) パスタロン、ケラチナミンなど(ただしびらん部位は避ける)

④ 【かゆみ・ヒリヒリが強いとき】

 内服の抗ヒスタミン薬(必要時)
アレグラ(フェキソフェナジン)
ザイザル(レボセチリジン)など
(※必須ではなく、症状次第)
もしかしたら、温熱性紅斑(火だこ)じゃないかも??
類似疾患があります!

・ リベド(網状皮斑)
 ⇒血流の障害で皮膚に網目状の赤紫色の斑点が出る 寒さで出てすぐ消える/持続する場合は膠原病の疑いも
・ 色素性紫斑
 ⇒細い血管が壊れて、赤紫色の点状出血が起こる 点状の出血/押しても色が消えない
・ 白癬(皮膚カビ)
 ⇒赤く円形に広がる湿疹/かゆみあり 真菌検査で菌が出る/網目状にはなりにくい
・ 有害物質・薬剤による皮膚炎
 ⇒ 放射線・薬剤・金属などで網目状の皮膚変化 使用歴・接触歴の確認が重要/全身症状がある場合も
・ 色素沈着(内因性)
 ⇒内服薬や代謝疾患で色素が沈着する 原因薬剤の内服歴あり/広範囲に起こることも

監修薬剤師/公衆衛生学修士 畔原 篤Atsushi Azehara

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

執筆者

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