
50代 男性のご相談
顔面神経損傷(顔面神経麻痺)って、どんな病気?

医師の回答
顔の半分または一部が動かしにくくなる病気です。

〜「顔の動きがおかしい」と感じたら、早めの対応がカギです〜
顔面神経損傷(顔面神経麻痺)は、顔の筋肉を動かす神経である顔面神経が外傷や手術、ウイルス感染、腫瘍などによって
傷ついたり圧迫されたりして働かなくなることで起こります。その結果、顔の片側が動かしにくくなったりゆがんだり、
目が閉じにくくなったり、口からよだれがもれるといった症状が出ます。場合によっては味覚の低下を伴うこともあります。
治療は原因に応じて薬による治療やリハビリ、手術などが行われ、多くは時間の経過とともに回復しますが、重症のときは後遺症が残ることもあります。
顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)とは、顔の表情を動かす神経である顔面神経が障害を受け、片側の顔の筋肉が十分に動かなくなる疾患です。突然「顔が動かない」「笑顔がゆがむ」といった症状に気づくことが多く、まぶたが閉じられずに目が乾燥したり、口元が垂れ下がって飲食に支障が出たりすることがあります。また、涙や唾液の分泌の異常、味覚の低下、耳の後ろの痛みや音の響き(聴覚過敏)といった症状が加わる場合もあります。発症は急性のことが多く、早期の対応が予後に大きく影響します。
顔面神経麻痺にはいくつかの病型があり、たとえば原因が特定できない「ベル麻痺(特発性)」、耳の中に帯状疱疹ウイルスが感染する「ラムゼイ・ハント症候群」、外傷や手術に伴う神経損傷、さらに脳卒中や脳腫瘍に伴う中枢性麻痺などがあります。特に中枢性か末梢性かの鑑別は診断において重要です。
【主な原因】
ベル麻痺:原因不明だがウイルス関与が疑われる
ラムゼイ・ハント症候群:帯状疱疹ウイルスの神経感染
外傷や手術による神経損傷
脳卒中や脳腫瘍による中枢障害
好発部位は片側の顔全体で、特に口角やまぶた、額の動きに左右差が現れます。乳幼児から高齢者まで幅広く発症しますが、中でも中高年層に多く見られる傾向があります。アレルギー体質や免疫低下のある人は、ウイルス関連の発症リスクが高いとされます。
進行は急激で、数時間から数日の間に顔の動きが低下します。悪化すると目が閉じられず角膜障害を起こすことや、口が動かず食べ物がこぼれることがあります。慢性期には異常な神経再生による病的共同運動(まばたきと口の動きが同時に起こるなど)が残ることもあります。乾燥や疲労、ストレスなどが症状悪化の因子となり、早期の治療開始は後遺症を防ぐために重要です。
✅ 使用される治療・ケア(顔面神経損傷/顔面神経麻痺)
① 【基本情報と分類】
▶ 顔面神経麻痺とは、第Ⅶ脳神経(顔面神経)が何らかの原因で損傷・障害され、表情筋や涙腺・唾液腺の運動機能が低下する状態です。
末梢性顔面神経麻痺 顔の上・下ともに麻痺(片側)。Bell麻痺・ラムゼイハント症候群など
中枢性顔面神経麻痺 下顔面中心の麻痺。脳梗塞・脳出血などが原因。額のしわ寄せは可能
② 【代表的な原因と特徴】
Bell麻痺(特発性) 最も頻度が高い。片側性、急性発症、原因不明だがウイルス関与が疑われる
ラムゼイ・ハント症候群 VZV(帯状疱疹ウイルス)由来。耳周囲の発疹+顔面麻痺+難聴・めまいを伴う
外傷性(骨折・術後など) 側頭骨骨折、耳下腺手術、顔面の打撲など。回復に時間がかかり後遺症残りやすい
中枢性(脳卒中など) 額の動きは保たれ、失語・半身麻痺など他の神経症状を伴うことが多い
その他 帯状疱疹後遺症、Guillain-Barré症候群、腫瘍圧迫、ライム病、先天性(小児)など
③ 【初期治療・使用薬】
抗ウイルス薬(必要時) アシクロビル、バラシクロビルなど
→ 特にラムゼイハント症候群では発症72時間以内に投与が効果的
ステロイド(急性期) プレドニゾロン(経口または点滴)
→ Bell麻痺では早期のステロイド投与で回復率向上
鎮痛薬・抗炎症薬 NSAIDs、アセトアミノフェンなど
→ 耳痛や発疹部の痛みに対応
ビタミン剤(補助) メコバラミン(ビタミンB12)
→ 末梢神経の修復をサポートする補助療法
④ 【リハビリ・理学療法】
表情筋マッサージ 筋萎縮・拘縮予防。無理なく鏡を見ながら顔を動かす練習を指導
顔面運動訓練 医師・リハビリスタッフによる個別プログラム(まばたき、口すぼめ、頬ふくらませなど)
神経電気刺激療法(必要時) 専門施設でのリハで導入されることあり。ただし急性期は避けることが多い
音声・嚥下指導(重症例) 口元の動き・発音障害・水飲み困難などへの訓練指導が必要なケースもあり
⑤ 【眼のケア(閉瞼不全のある場合)】
眼軟膏・人工涙液の点眼 乾燥性角結膜炎の予防に。1日数回点眼が必要
眼帯・閉眼テープ 睡眠中や屋外活動時にまぶたが閉じない場合の物理的保護
角膜炎の兆候に注意 異物感・充血・痛み・視力低下があれば眼科紹介を早急に行う必要あり
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・問診:顔の動きの左右差やまぶた・口角・額のしわの状態を確認し、発症時期や経過を聴取します。症状の広がりから中枢性か末梢性かの鑑別にも役立ちます。
- 神経学的検査:顔面の筋力テストや感覚評価を行い、他の神経症状の有無を確認します。脳卒中や脳腫瘍の可能性を見極めるうえで重要です。
- 血液検査:炎症反応やウイルス感染の有無を調べます。特にラムゼイ・ハント症候群を疑う場合には抗体検査が補助的に使われます。
- 画像検査(MRI・CT):脳や内耳周囲の病変を評価し、腫瘍や脳梗塞などの中枢性病変を除外するために行われます。急性期の診断に有用です。
- 電気生理学的検査(神経伝導検査・筋電図):顔面神経の障害の程度や再生の見込みを把握するために行います。発症から数日〜1週間以降に有効で、治療方針の参考となります。
- 耳鼻咽喉科的評価:耳の発疹や痛みがある場合に耳鏡で確認し、帯状疱疹の診断に結びつけます。
🩺 顔面神経麻痺と間違えやすい類似疾患
脳梗塞・脳出血(中枢性顔面麻痺)
⇒脳の損傷による麻痺 額のしわ寄せ・目の閉じはできるが、口が動かないのが特徴
ラムゼイ・ハント症候群
⇒帯状疱疹ウイルスによる麻痺 耳に水疱が出る/激しい耳痛/難聴・めまいを伴うことが多い
重症筋無力症
⇒神経筋接合部の異常で表情筋が動きにくくなる 表情が乏しくなる/全身の筋力低下・眼瞼下垂もあり
片側顔面けいれん
⇒顔面神経が血管に圧迫されてピクピクする 「動かない」ではなく「勝手に動く(けいれん)」/会話や笑顔で悪化
ボツリヌス中毒・薬剤性
⇒ボツリヌス毒素や薬による筋肉麻痺 両側性に出やすい/眼・喉・四肢にも力が入りづらくなる
先天性顔面神経麻痺(Moebius症候群など)
⇒生まれつき顔の筋肉が動かない 両側性のことが多く、ほかの奇形を伴う場合あり
予防のポイント 顔面の異常を感じたらすぐに受診する
十分な睡眠をとり免疫力を保つ
ストレスをため込まない生活習慣を心がける
感染症(特に帯状疱疹)への注意と早期治療
寒冷刺激や過度な疲労を避ける
目の乾燥を防ぐために保湿や点眼を活用する
リハビリやストレッチを継続して表情筋を保つ
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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