
30代 女性のご相談
モンドール病ってどんな病気?

医師の回答
モンドール病は、30~60歳代の女性に多く、胸から腹部、またはわきから腕にかけて3~10 mm幅のスジ状のしこりがあらわれる病気です。
〜「胸の皮膚の下にすじばった痛み」…それは浅い血管の炎症かもしれません〜 急に激しい運動、きつい衣服や下着を身に着けることなどで、局所的に血液やリンパの流れが悪くなり、うっ滞することによって発症すると考えられています。 引っ張られるような痛み[牽引痛(けんいんつう)]や自発痛を伴う場合がありますが、多くの場合、自然に治ります。
モンドール病(Mondor病)とは、胸やわき、腹部、腕などの皮膚直下を走る浅い静脈に炎症が生じ、硬く索状〔さくじょう〕に触れる病態の総称です。医学的には「表在性血栓性静脈炎」と呼ばれ、多くは数週間から数か月で自然に軽快する良性の経過をたどります。症状としては皮膚の下に触れる“すじ”のような硬結、押した際の痛みや違和感、場合によっては赤みや軽い腫れを伴います。特に女性の胸部やわきの下に発症することが多く、乳腺のしこりと区別が難しいため、不安を抱えて受診される方も少なくありません。
たとえば、胸部やわきの索状硬結、腹部に沿った硬いすじ、腕に出る表在性血管炎などが代表的な病型です。いずれも表皮直下の静脈に一致して線状に硬く触れることが特徴で、乳腺疾患や皮膚腫瘍などとの鑑別が必要になる場合があります。
【主な原因】
下着やブラジャーによる慢性的な圧迫
運動やマッサージ、打撲などの外的刺激
手術や注射後の血管損傷
脱毛やシェービングによる微小外傷
まれにがんや血液疾患に関連
好発部位は乳房・わきの下・胸壁で、女性に比較的多くみられます。男性でも腹部や腕に出ることがあり、日常生活で静脈に刺激が加わりやすい人に発症しやすい傾向があります。
経過としては、初期に皮膚下のつっぱり感や軽い痛みが現れ、数日から数週間で硬い索状物として触れるようになります。その後は炎症が落ち着き、1〜2か月程度で自然に吸収されて目立たなくなるのが一般的です。ただし乾燥や摩擦、締め付け、強い運動などで悪化することもあります。早期に受診して鑑別を受けることで不要な不安を減らし、症状に応じた対症療法が受けられることが生活の安心につながります。

✅ 治療法(ほとんどの場合、自然治癒します)
モンドール病は良性かつ自然軽快する疾患であり、基本的には保存的治療が主体です。
◆ 保存療法(第一選択)
内容 説明
安静・圧迫の回避 締めつける衣服を避け、無理な運動を控える
温罨法 温めて血行を促進(温タオルなど)
鎮痛薬・NSAIDs 痛みや炎症が強い場合に使用(ロキソニン®、ボルタレン®など)
外用消炎薬 インドメタシンゲル、ボルタレンゲルなど
◆ その他の薬物療法(必要時)
状況 薬剤名 目的
強い炎症・疼痛 NSAIDs内服(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど) 鎮痛・抗炎症目的
再発を繰り返す/血栓傾向 抗血小板薬(バイアスピリン®など)を使うこともある(まれ)
◆ 病院で何を調べるの?
- 視診・触診:皮膚直下の索状硬結の有無を確認します。特徴的なすじ状の硬さを触れることで診断の手がかりになります。痛みや発赤の有無も併せて評価されます。
超音波検査(エコー):血管の走行や血栓の有無を確認する目的で行われます。非侵襲的で短時間に行えるため、乳房に近い部位では乳腺疾患との鑑別にも役立ちます。
乳腺エコー:胸部にしこりが出現した場合、乳がんや乳腺炎との鑑別に用いられます。血管に一致した線状硬結であればモンドール病と判断されることが多いです。
血液検査:炎症反応や凝固系の異常を確認するために行われることがあります。まれながんや血液疾患が関与する場合には追加の精査につながります。
MRIやCT:通常は不要ですが、症状が長引く、再発を繰り返す、腫瘍の合併が疑われる場合に行われることがあります。画像的に血管や周囲組織の状態を精査することが可能です。
🔍 モンドール病と間違えやすい疾患(類似疾患)
乳がん(炎症性乳がん)
⇒ 乳房に赤み・腫れ・硬結 乳房の奥にしこり/痛みや発熱あり/画像検査で診断
血栓性静脈炎(深部静脈)
⇒ 脚や腕に腫れ・痛み・熱感 部位が深く、全体が腫れる/全身症状が出ることも
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
⇒ ピリピリする痛み+帯状の赤いブツブツ 水ぶくれ・神経痛あり/片側に沿って発疹が出る
筋膜炎・筋肉痛
⇒ 急な動きで筋を痛める/腫れはなし 発赤なし/安静で改善/表面が硬くない
皮膚線維腫・脂肪腫
⇒ やわらかいしこり/慢性的に存在 ゆっくり大きくなる/痛みなしが多い
胸壁のガン(皮膚転移)
⇒ スジ状に見える腫瘤が皮膚下に出ることあり 進行性/痛みや全身症状あり/画像・生検で診断
予防のポイント 締め付けの強い下着や衣服を避ける 長時間同じ姿勢を続けず、適度に体を動かす 強い運動やマッサージの直後は様子を見る 脱毛やシェービングの際は皮膚を傷つけないよう注意する 皮膚や血管への打撲や圧迫を避ける 疲労やストレスをためず、十分な休養をとる 胸部や乳房にしこりを感じたら自己判断せず早めに受診する
<参考資料>
新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。
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