【保険適用】ヒフメド|皮フ科専門オンライン診療

30代 女性のご相談

クインケ浮腫ってどんな病気?

医師の回答

クインケ浮腫は、突然まぶたや口唇などがむくむ病気です。

〜まぶたやくちびるが突然パンッと腫れた?それ、「クインケ浮腫」かも!?〜
クインケ浮腫は、突然まぶたや口唇などがむくむ病気です。
原因は特定できないことが多く、ストレスや疲労が発症要因になりやすいといわれています。
突然むくみだけがあらわれ、2~5日間持続します。通常、かゆみを伴わず灼熱感を伴う場合があります。
まぶた、口唇、舌、手足にあらわれやすいのが特徴です。

クインケ浮腫(くいんけふしゅ)とは、まぶたやくちびる、顔、手足、のどなどの皮膚や粘膜の下に突然むくみが現れる病気で、医学的には「血管性浮腫(けっかんせいふしゅ)」とも呼ばれています。数分から数時間のうちに急に腫れが広がるのが特徴で、場合によっては数日間持続します。かゆみを伴わず、腫れた部分に熱感や圧迫感、灼熱感を感じることがあり、ときには痛みとまちがえられることもあります。特にまぶたや唇、舌、のど、手足にあらわれやすく、左右非対称または片側だけに腫れることもあります。

この病気の発症は突発的で、原因がはっきりしない(特発性)ことも多くありますが、大きく分けて「アレルギー性(ヒスタミン型)」と「非アレルギー性(ブラジキニン型)」の2つのタイプに分類されます。アレルギー性の場合は、特定の食べ物(エビ・ナッツ・小麦など)、薬剤(抗生物質、解熱鎮痛剤など)、ハチ刺され、動物、花粉といったアレルゲンが引き金になることがあります。一方、非アレルギー性のものでは、高血圧治療に使われる「ACE阻害薬」による副作用や、遺伝的に補体C1インヒビターというたんぱく質が欠損する「遺伝性血管性浮腫(HAE)」などが原因になります。

どちらの型も、血管から体液が皮膚の下にしみ出すことで腫れを引き起こします。中でも注意が必要なのは、舌や喉、咽頭・喉頭といった気道周辺が腫れてしまう場合です。このようなケースでは呼吸困難や窒息のリスクがあり、救急対応が必要な緊急疾患とされています。腫れが顔だけに限られている場合は自然に改善することもありますが、呼吸や飲み込みに違和感を感じたときは、ためらわずに医療機関を受診してください。

治療は原因に応じて異なります。アレルギー性のクインケ浮腫には、抗ヒスタミン薬やステロイドの内服・点滴が用いられ、重症時にはアドレナリン(エピペン)の注射が必要になることもあります。非アレルギー性では、ACE阻害薬を中止することが第一で、遺伝性血管性浮腫の場合にはC1インヒビター製剤やブラジキニン関連の治療薬が使われます。いずれのタイプでも、気道に腫れが及ぶ場合には入院や呼吸管理が必要になることがあります。

特に注意すべきなのは、「虫刺されかと思っていたが、全くかゆみがない」「腫れが何度も繰り返す」「腫れとともにのどが苦しくなってきた」といったケースです。これらの症状が見られる場合は、早期に皮膚科や内科、または救急科を受診することが重要です。また、クインケ浮腫は再発しやすい傾向があるため、原因が特定できた場合にはアレルゲンや誘因薬を避ける生活指導が必要になります。家族に同様の病歴がある場合には、遺伝性の可能性を考慮して専門医による精密検査を受けることもあります。

突然の顔のむくみや、声が出しにくい、のどが狭く感じるといった症状が現れたとき、「そのうち治るだろう」と放置せず、早めの医療相談が大切です。とくに唇やまぶたがパンパンに腫れた、のどが苦しいといった症状は、クインケ浮腫のサインかもしれません。

✅ ① アレルギー性クインケ浮腫(ヒスタミン性)の治療薬
● 抗ヒスタミン薬(第一選択)

フェキソフェナジン アレグラ 第2世代。眠気少ない
オロパタジン アレロック 効果強め、眠気に注意
レボセチリジン ザイザル 小児にも使用可
ヒドロキシジン(第1世代) アタラックスP 急性期に注射で使用されることも

● ステロイド薬(重症例や喉頭浮腫のリスクありの場合)

プレドニゾロン(内服) 急性期に短期で使用
ヒドロコルチゾン(注射) 緊急時に静注対応も

● アドレナリン(緊急時)

アナフィラキシーショック併発 エピペン(筋注)などを緊急使用

✅ ② 非アレルギー性クインケ浮腫(遺伝性など)の治療薬
※ 抗ヒスタミン・ステロイドは無効
※ 補体(C1インヒビター)関連の治療が必要です

● 急性発作時の治療薬(保険適用あり)

C1インヒビター製剤 ベリナートP静注 日本で使用可能な唯一のC1-INH補充薬(静注)
ブラジキニンB2受容体拮抗薬 イカチバント(Firazyr) 海外承認済。国内未承認(2025年時点)

● 発作予防薬(再発の多い遺伝性血管性浮腫に)

アンドロゲン誘導体(ダナゾールなど) 発作頻度を抑制(長期予防に)※副作用に注意
トラネキサム酸 抗線溶薬として補助的に使用されることあり

「もしかしてクインケ浮腫かも…」と思ったら?
自分で判断せずに皮ふ科へ相談を!
当院では、スマホで受けられるオンライン診療も対応しています
症状の確認からお薬の処方まで、自宅から気軽にご相談ください

 🔬 病院で何を調べるの?

病院での診察・検査一覧
調べること内容目的
視診・問診腫れの場所・経過・既往歴アレルギーか非アレルギーかの見極め
血液検査(C4・C1インヒビターなど)補体系の評価遺伝性血管性浮腫(HAE)の診断
アレルギー検査(IgEなど)アレルゲンの特定ヒスタミン型かどうか確認
薬剤確認高血圧薬やNSAIDsの服用歴薬剤誘発型の可能性を検討
内視鏡・バイタル確認喉頭の腫れ・呼吸状態の把握緊急対応が必要か判断

症状が軽い場合でも、繰り返すクインケ浮腫には重大な疾患が隠れていることがあります
「原因がわからない」「数回目の発症」などの場合は、皮膚科または内科での専門的な精査がすすめられます。

 

🩺 よく間違えられる疾患(鑑別疾患)

 じんましん(蕁麻疹)

⇒表面が赤く盛り上がって強いかゆみ クインケ浮腫はもっと深部が腫れ、かゆみが少ない

 接触皮膚炎(かぶれ)

⇒何かに触れた部分に赤み・ブツブツ・かゆみ 腫れよりかゆみが強い/時間をかけて出てくる

 感染による腫れ(蜂窩織炎など)

⇒痛み・熱感・赤み・発熱を伴う 徐々に悪化/抗菌薬が必要なことも

 遺伝性血管性浮腫(HAE)

⇒クインケ浮腫の特殊型/補体という体の免疫異常による 家族歴あり/呼吸困難や腹痛が主症状の場合も/ステロイドが効きにくい

予防のポイント
クインケ浮腫を防ぐ5つの習慣
・アレルゲン・誘因を知って、避ける
・薬歴・病歴を医師にきちんと伝える
・ストレス・疲労をためすぎない
・定期的な検査や専門医の診察を受ける
・再発・重症化に備えて対処法を準備しておく

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

ヒフメドの編集チームは、皮膚疾患で悩む方に向けて専門的かつ最新の情報を分かりやすく届けることを目指しています。
アトピーや皮膚感染症といった疾患の基礎知識から、治療・生活管理の実用的なコツ、最新の治療事情まで幅広くカバー。読者が記事を読むことで「すぐに役立てられる」情報提供を心がけています。