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20代 女性のご相談

口唇炎、口角炎ってどんな病気?

医師の回答

口唇炎、口角炎は、唇や口角に炎症が起きる疾患です。口唇炎は唇全体に、口角炎は口角(唇の両端)に症状が現れます。

〜くちびるや口の端がカサカサ・ピリピリする…それ、炎症かもしれません〜
口唇炎(こうしんえん)とは、は、くちびるが赤くなったり、乾燥して皮がむけたり、ひび割れて痛くなる状態です。
口角炎(こうかくえん)は、口の端(口角)に赤み・ただれ・ひび割れが起こる炎症です。

口唇炎(こうしんえん)とは、くちびるに赤みや乾燥、ひび割れ、皮むけなどの症状を引き起こす炎症性の皮膚疾患です。口角炎(こうかくえん)は口の端に赤みやただれ、裂けやすさが出る状態を指し、いずれも痛みやかゆみを伴うことがあります。日常生活では会話や食事に支障をきたすこともあり、見た目の不快感だけでなく生活の質にも影響する病気です。発症は子どもから高齢者まで幅広くみられ、乾燥や刺激、感染など多様な要因が関与します。

たとえば、単純な乾燥による口唇炎、化粧品やリップ製品による接触皮膚炎、唇を舐めるクセによる刺激性口唇炎、また口角炎ではカンジダや細菌感染、義歯やマスク摩擦による炎症などが代表的なタイプです。

主な原因
  • 乾燥・寒風・紫外線などの外的刺激

  • リップクリームや口紅による接触皮膚炎

  • 舐めグセや唾液による刺激

  • ビタミンB群や鉄分不足などの栄養不良

  • カンジダや細菌の感染

好発部位は唇全体や口角で、とくに皮脂腺が少なく乾燥しやすい部分に出やすい傾向があります。なりやすい人はアトピー性皮膚炎やアレルギー体質の方、義歯を使用している高齢者、唇をよく舐める子ども、また疲労や免疫力低下のある人です。

経過としては、初期には軽度の赤みや乾燥から始まり、悪化するとひび割れや出血を伴い、さらに慢性化すると皮膚が厚く硬くなる苔癬化〔たいせんか〕に至ることもあります。悪化因子としては乾燥、摩擦、唾液、紫外線、マスクなどがあり、長引く場合は感染を合併することもあります。早めに皮膚科を受診し、適切な治療やスキンケアを行うことで再発予防や生活の質の改善につながります。

✅ 1. 口唇炎(こうしんえん)
✅ 治療に使われるお薬
分類        代表薬        用途

ステロイド外用薬        ロコイド®・キンダベート®など        炎症・赤み・かゆみを抑える(短期間)
保湿剤        ワセリン・ヒルドイド®など        乾燥・刺激を防ぐ/リップ代用としても
タクロリムス軟膏(プロトピック®)        ステロイド非依存の免疫抑制剤        アトピー性口唇炎などで使用/まぶたや口にも使える
抗真菌薬外用        ニゾラール®・ルリコン®など        カンジダ感染が疑われる場合
抗ウイルス薬        アラセナ-A®・ゾビラックス®軟膏        ヘルペスが原因の場合
内服抗アレルギー薬        アレグラ®・アレジオン® など        痒み・アレルギー反応の抑制に補助的に使うことも

✅ 2. 口角炎(こうかくえん)
✅ 治療に使われるお薬
分類        代表薬        内容

抗真菌薬外用        ニゾラール®クリームなど        カンジダ感染が疑われるとき(白い付着物・難治性など)
ステロイド外用薬(弱め)        ロコイド®・キンダベート®など        炎症・赤み・かゆみに短期間使用
抗菌薬外用        ゲンタシン®軟膏など        細菌感染があるとき(膿やただれ)
保湿剤        ワセリンなど        刺激保護/乾燥防止に
ビタミン剤内服        B2・B6・鉄・亜鉛など        繰り返す口角炎では補助的に使用されることがある

 🔬 病院で何を調べるの?

  • 視診・問診:症状の範囲や経過、生活習慣や使用している化粧品・薬剤の確認を行い、原因を推定します。乾燥や刺激性か、感染かを大まかに判断する第一歩です。
  • パッチテスト:化粧品やリップクリームなどによる接触皮膚炎が疑われる場合に行います。48〜72時間後に判定し、使用を控えるべき成分の特定につながります。

  • 真菌鏡検(KOH検査):口角炎でカンジダ感染が疑われる場合に行います。皮膚の一部を採取して顕微鏡で真菌の有無を確認します。短時間で結果が得られるのが特徴です。

  • 細菌培養検査:膿やただれを伴う場合に行い、原因菌を同定します。適切な抗菌薬の選択に役立ちます。結果が出るまで数日かかることがあります。

  • 血液検査:ビタミンB2、B6、鉄分など栄養状態や、アレルギー体質の有無を確認します。慢性的に繰り返す場合や治りにくい例では、全身の健康状態を把握する手がかりになります。

🔬 間違えやすい他の病気(鑑別)
疾患名 特徴 見分けポイント

口唇ヘルペス
⇒水ぶくれ→ただれ/ピリピリする/単純ヘルペスウイルスが原因 再発しやすい/水ぶくれ→かさぶたが特徴/抗ウイルス薬で改善

アレルギー性接触皮膚炎
⇒リップ・歯磨き粉・食べ物などに反応 使ったあとに悪化/リップや口紅を変えた?がヒントに

よだれかぶれ(乳児)
⇒赤ちゃんのよだれ・哺乳びんの刺激でくちまわりが赤くなる 乳児期に多い/食事・よだれの頻度と関係

カンジダ性口角炎
⇒真菌(カンジダ)による感染/赤くただれてジュクジュク なかなか治らない/白い苔が見えることも/抗真菌薬が必要

アトピー性皮膚炎
⇒口のまわりに湿疹が出る/冬に悪化 他の部位にも湿疹あり/繰り返しやすい/乾燥肌がベース

光線性口唇炎(日焼けによる)
⇒強い紫外線でくちびるが赤く腫れたり皮むけ 野外活動後に悪化/上下の唇全体が赤い・ヒリヒリ

予防のポイント
低刺激のリップやワセリンでこまめに保湿する
唇を舐めたり噛んだりするクセを避ける
食後は口まわりを清潔にし、唾液を拭き取る
マスクや義歯の摩擦を減らし、刺激を最小限にする
紫外線対策としてUVカットリップを使用する
栄養バランスを整え、ビタミンB群や鉄を意識して摂る
ストレスや疲労をためず、免疫力を保つ生活を心がける

<参考資料>

新潟薬科大学卒業。筑波大学大学院 公衆衛生学学位プログラム修了(修士)
ウエルシア薬局にて在宅医療マネージャーとして従事し、薬剤師教育のほか、医師やケアマネジャーなど多職種との連携支援に注力。在宅医療の現場における実践的な薬学支援体制の構築をリード。2023年より株式会社アスト執行役員に就任。薬剤師業務に加え、管理業務、人材採用、営業企画、経営企画まで幅広い領域を担当し、事業の成長と組織づくりに貢献している。さらに、株式会社Genonの医療チームメンバーとして、オンライン服薬指導の提供とその品質改善にも取り組むとともに、医療・薬学領域のコンテンツ制作において専門的なアドバイスを行っている。経済産業省主催「始動 Next Innovator 2022」採択、Knot Program 2022 最優秀賞を受賞。

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