盛り上がるイボや治らない傷は危険?代表的な皮膚がん「有棘細胞がん」の原因と対策
有棘細胞がんは、皮膚の大部分を占める「有棘層(ゆうきょくそう)」という細胞ががん化して起こる病気です。放置すると進行し、リンパ節や他の臓器に転移する可能性があるため、皮膚科医が非常に注意深く診察する疾患の一つです。
1. 有棘細胞がんの正体とは?なぜ「ただの傷」と見分けがつかないのか
有棘細胞がんは、一見すると不潔な傷跡や、盛り上がった大きなイボのように見えます。その実態を詳しく紐解いていきましょう。
この病気は、長年にわたって太陽の光(紫外線)を浴び続けてきた高齢の方に多く発症します。そのため、顔、頭、手の甲など、日光が直接当たる場所に現れやすいのが特徴です。しかし、それだけではありません。過去の火傷(やけど)の跡や、なかなか治らない慢性的な湿疹、あるいは数十年前の古い傷跡などから発生することもあり、日光の当たらない場所であっても「治りの悪い傷」には注意が必要です。
発生のプロセスは、じわじわと数ヶ月単位で進行します。最初は小さな赤い盛り上がりや、カサカサした斑点から始まりますが、次第に中心部が崩れて深い傷(潰瘍)になったり、カリフラワーのようにボコボコと盛り上がってきたりします。他の皮膚トラブルとの大きな違いは、特有の「嫌な臭い」を放ったり、ちょっと触れただけで簡単に出血したりする点にあります。
肌の奥で起きている変化は、皮膚の細胞が異常なスピードで増殖し、周りの健康な組織を破壊しながら深く侵入していく状態です。初期段階では痛みやかゆみが少ないことも多く、「痛くないから大丈夫」と放置してしまうことが、発見を遅らせる最大の原因となります。
最も大切なのは、がんが皮膚の表面だけに留まらず、深い層やリンパ管にまで到達する前に治療を開始することです。放置すればするほど根が深くなり、体全体へのリスクが高まってしまいます。
2. 【事例】現場から届いた「有棘細胞がん」のリアルな声
火傷の跡が盛り上がってきた(60代 女性)
「子供の頃に負った足の火傷の跡が、最近になってカサカサして、少しずつ盛り上がってきました。最初は乾燥しているだけだと思い、保湿クリームを塗っていましたが、そのうち靴下に血がつくようになり、変な臭いもし始めました。慌てて皮膚科へ行くと有棘細胞がんだと診断。手術で取り除きましたが、まさか数十年前の傷跡からがんができるなんて思ってもみませんでした。」
医師からのメッセージ:前がん状態を見逃さないで
「有棘細胞がんには、その前段階である『日光角化症』や『ボーエン病』といった状態が存在します。これらはまだ『表皮内』に留まっている早期のサインです。この段階で発見できれば、治療の負担は最小限で済みます。『表面が硬く角質化している』『かさぶたが取れてもすぐまたできる』といった症状があれば、早めに専門医の診察を受けてください。特に、過去に大きな怪我や火傷をした場所が変化してきた場合は、早急な確認が必要です。」
3. 皮膚科で行われる「有棘細胞がん」の検査と治療リスト
正確な診断と、病期(ステージ)に合わせた的確な治療が行われます。
① 詳しく調べるための検査
- ダーモスコピー検査: 特殊な拡大鏡で皮膚を観察します。がん特有の血管の形状を肉眼より詳しくチェックします。
- 皮膚生検(ひふせいけん): 組織の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の種類や悪性度を確認する、最も重要な検査です。
- 画像検査(CT・MRI): がんがどのくらいの深さまで進んでいるか、リンパ節や他臓器への転移がないかを調べます。
② 主な治療法
- 外科的切除(手術): 第一選択となる治療です。がん細胞とその周囲の健康な皮膚を、余裕を持って切り取ります。
- 放射線療法: 手術が難しい場所や、高齢で手術が受けられない場合、または手術後の再発防止として行われます。
- 化学療法(抗がん剤): 転移が見られる場合や、手術だけでは不十分な場合に検討されます。
4. 信頼できるデータ:もっと詳しく知りたい方へ
この記事は、以下の公的な医学的根拠に基づいて構成されています。
- 国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/public/cancer/squamous_cell_carcinoma/index.html
- 日本皮膚科学会:皮膚がんQ&A(有棘細胞がん)
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/q03.html
5. まとめ:自分の肌を「観察」する習慣を
- 「治らない傷」を放置しない:2週間以上経っても治らない傷や、徐々に大きくなる盛り上がりは皮膚科へ相談しましょう。
- 「出血・臭い」は警告サイン:普通のイボや傷ではあまり見られない、がん特有の特徴です。
- 紫外線対策を徹底する:将来の有棘細胞がんを防ぐために、高校生のうちから日焼け止めや帽子を活用する習慣をつけましょう。
「皮膚がんは、自分の目で見て見つけることができるがんです。」 毎日鏡を見るついでに、顔や手に「変わったもの」ができていないかチェックしてみてください。少しでも違和感があれば、ヒフメドで近くの皮膚科専門医を検索し、相談することをおすすめします。
執筆・監修:ヒフメド編集部(皮膚科専門医協力) ※この記事は疾患の啓発を目的としています。具体的な診断については、必ず医師の診察を受けてください。
医師
山田 貴博 Yamada Takahiro
- 2010年:名古屋市立大学医学部 卒業
- 2010年:NTT西日本大阪病院、阪南中央病院にて研修
- 同年:大阪大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学講座にて基礎医学研究に従事
- 2015年:阪南中央病院皮膚科 勤務
- 2017年:天下茶屋あみ皮フ科クリニック 開業
- 2024年:AMI SKIN CLINIC 開設
- 2025年:東京駒込皮膚科クリニック 開業
皮膚のトラブルは、見た目の悩みだけでなく、痒みや痛みによって日常生活の質(QOL)を大きく下げてしまうものです。「こんな些細なことで相談してもいいのかな?」とためらわず、ぜひお気軽にご相談ください。
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